大学進学を機に、生まれ育った関西から僕は上京した。
何もかもが新鮮で、日々触れる情報の量にただただ驚きつつも、負けないように食らいついて過ごしてきた。気づけば5年目を終えようとしている。大学生活は、東京に来てから出会ったトライアスロン一色になり、納得のいく結果も残せた。目標を立て、必死に練習し、結果が出るプロセスはとてもやり甲斐があり、充実した日々を過ごせた。けれども僕には、もっと純粋に好きでやってみたいことがあった。それは「食」に関する活動だった。
小さなころから食べることが好きで、将来は「食」に関わる仕事につきたいと思っていた。しかし、大学でひたすらスポーツに打ち込んだ結果、「食」との距離は離れていくばかり。そのため、大学3年生になり、就職活動を始める時期が近づいてくると将来がとても不安になった。
「食に関することは好きだけど、一体どんなことができるのか全くわからない。自分が「食」の分野で働いているイメージが湧いてこない」
そんなことを毎日考えていると、就職するよりもまずはその分野に足を突っ込んでみたくなった。だから僕は大学を休学し、そして、福島の食と出会った。
僕にとっての関係人口
美味しいものや、それをつくる生産者の近くで活動がしたいと探し、たどり着いた場所が福島県だった。都内のイベントで関係者の方と知り合い、その流れで福島県内のイベントに参加し、食べた野菜の味に感動した。何より、「食」を支える人々がとても魅力的で、この人たちと一緒に何かをしたいと感じたことを今でも強く覚えている。僕は「食」の分野をもっと知るために、福島県内のインターンシップに参加した。そして、たくさんの美味しいものと素敵な人々に出会い、多くのご縁をいただいた。現地で活動したからこそ、地域のリアルに触れ、深い魅力を感じるようになっていった。
ファイアープレイスとの出会い
福島県でのインターンシップ生活を通して、僕は福島の食の豊かさや人々の優しさに惹かれるようになった。
「地方は美味しいもの、素敵な人で溢れている。それなのに、まだまだ知られていない。もっとたくさんの人に知ってほしい、そして好きになってもらいたい。」
そのころの僕は、地方と都市の人々をつなぐきっかけを作れないものかとモヤモヤしていた。そんな気持ちを抱えながらも、もうすぐインターンシップが終わろうとしていた頃、県内で生産者と交流するイベントが行われ、その場で出会ったのが弊社(ファイアープレイス)代表の渡邉だった。
「ビジョンをつなぐ、場とコミュニティの創造を通じて、社会をより良くする」をビジョンに掲げるファイアープレイスは、場づくりを事業の中心に置いている。夢や、志や、やりたいことを介して、人々がつながる「場」を創造するという事業に、渡邉は挑戦していた。
その取り組みの一つに、生産者と消費者をつなげる場づくりもあった。これは、まさに僕が目指していた地方と都市の人がつながるきっかけ作りだと思った。さらに渡邉は、それまでのキャリアでたくさんの地方の人々と関わっていた。僕は大学で社会学を専攻し、都市と地方の新しい関係について関心があったので、その分野の実践的な経験についても、近くで学べることは多いと感じた。
自分がお世話になった福島の「食」や「人」をもっとたくさんの人に知ってもらいたい。全国各地の魅力をもっと多くの人に知ってもらい、地域と人がつながるような場づくりを実現したい。大学最後の1年間、都市と地方の新しい関わり方について研究したい。
そうした想いのもとで、僕は2019年、ファイアープレイスの門を叩いた。
関係人口とは何か。
ファイアープレイスで働きながら、都市と地方の新しい関わり方である「関係人口」について、学問として研究をすすめた。
現在の日本では、地方から都市へ、特に首都圏へと人が移動し、集中している。そのため、地方の過疎化、少子高齢化が進行している。町を担う人手がいなくなると、その町は弱体化してしまうため、特に地方では移住・定住人口を獲得するための取り組みが数多く行われるようになった。国も地方も、人が地方に移動するように必死に取り組んだ。「わが町の定住人口が増えて欲しい」と必死になる自治体。そもそも、日本全体の人口は少なくなるわけで、これではパイの奪い合いが加速するだけだ。定住人口が増えた勝者の裏に、弱体化を余儀なくされた敗者が存在してしまう。
そうした背景下、2016年度、これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会が総務省により設置された。この検討会において、これからの地域づくりの担い手は、従来からの地域住民だけではなく、移住者や地域外の人材など、地域内外の担い手を活用していくことが重要であるとの議論がされる中で、「長期的な定住人口でも短期的な交流人口でもない、地域や地域の人々と多様にかかわる者」が注目された。この、地域や地域の人々と多様にかかわる者こそが「関係人口」である。
関係人口には、様々な関わり方がある。
・地域には行けない代わりに地域の産品を定期的に購入する
・地域に住んでいるわけではないが、定期的に地域を訪ねて地域の催しに参画する
・都市にいながら、地方のプロジェクトに自らのスキルを活かして関わる
・都市と地方で2拠点生活をする
上記の他にも、関わり方はたくさんある。地域や地域の人々と、「多様な形(自分なりの関わり方)」で、「継続的」に関わっていることが重要なのだ。
僕自身、現在福島に住んでいるわけでも、働いているわけでもない。それでも、定期的に福島を訪ね、地元の方と交流し、地酒を買ってまた東京へ戻るということを繰り返している。そう、僕は福島の関係人口の一人となっているのである。
人はなぜ、関係人口になるのか。
人はなぜ生まれ故郷でもない地域に、継続してかかわるのか。なぜ関係人口になるのか。
私の周りで、福島が好きで今でも通う人々に尋ねたところ、共通していたのは「その地域に住まう人とのつながり」があったことだ。ある人は、震災時に福島の地で暮らしていて、当時の大変な状況の中でも助けてくれた周りの人がいたからこそ、彼らのために今でも福島を応援したいと言っていた。またある人は、福島県でインターンをしていたときに、福島で出会った人たちの生き様に感動し、魅力を感じ、今でも応援したいからだと語ってくれた。かくいう僕も、今でも福島を訪ねるのは、ご縁の中で出会い、魅力を感じた食べ物と人々がその土地にいるからだ。彼らがいるからこそ、まるで里帰りをするかのように会いたくなってしまうのだ。
人は、自分がその後もつながっていたい人に出会い、関わるうちに、その人たちが好きな土地のことも、いつしか一緒に好きになっていくのだろう。そうして、気づけば関係人口の一人として、自分なりのかかわり方で継続して地域に関わっていくようになるのだ。
現在、都市部で暮らす人の中にはふるさとがないと感じている人がいる。両親共に東京都出身で、おじいちゃんおばあちゃんも23区内に住んでいるため、日本の原風景のような田舎にあこがれる、というような若者もいる。実際、若者の田園回帰の傾向は年々上がっているらしい。ふるさとにあこがれる人は実際に増えている。
そうした人たちはどうしたらいいのか。自分の生まれ故郷でなくても、定期的につながれるような場所を見つけるためには、まずはその土地の人やものと出会うことがいいのではないかと思う。そうすることで、自分が魅力的に思う人がいて、その先に関わりたい地域が見えてくるのかもしれない。だからこそ、地域にフォーカスした場づくりや、現地で活動する人と出会う場が大事なのだ。
ファイアープレイスにとっての関係人口とは
僕が所属するファイアープレイスは「場づくり」の会社だ。人が描く「ビジョン(ありたい姿)」がつながるような場づくりを、事業の根幹に置いている。それは時に地方に関わることも含む。地方に関心を持つ人が、より地方の人とつながれる場を提供しているのだ。
2/26(木)には、岩手県八幡平市の関係人口イベントをファイアープレイスが運営する日本橋CONNECTで行う。地方に興味がある、自分もかかわりの持てる地方を見つけてみたい。そんな人は、もしかしたらいい出会いになるかもしれない。そんな「場」を僕たちはこれからも作っていきたい。僕が福島で得たようなかかわり、つながりを生み出していきたい。
地方には魅力がある。だから僕は、関係人口になった。
イベント概要:
時間や場所にとらわれることなく働くフリーランスの皆さんを呼び、協働合宿を通じて八幡平のファンになっていただく「さすらい合宿」。起業を志す全ての人のために、短期集中でプログラミングを徹底的に学ぶ「スパルタキャンプ」。
自分たちのまちに関わる人たちを増やすために、「やべえ取組み」を次々と仕掛け続ける岩手県八幡平市。同市の職員や、八幡平に関心のある人々が一同に会するイベントです。
当日は、岩手県の食材を用いた贅沢な鉄板焼をご用意しています。また、八幡平市の日本酒「鷲の尾」と、名産「山葡萄」をつかったオリジナルカクテルを準備します。八幡平市の魅力、そして、同市に関わる人たちが織り成す働き方と生き方に触れ、心地良い刺激を共有しませんか。
◎こんな人に来て欲しい
・ローカル(な暮らし)に興味がある
・新しいコミュニティをつくりたい
・八幡平のことを知りたい
・新しい働き方・生き方のヒントを得たい
開催日時
2020年2月26日(水)18時半(18時開場)〜21時
タイムスケジュール
18:00~受付
18:30 はじめの挨拶/乾杯
18:45~ 調理、お食事、八幡平市の紹介
21:00 写真撮影〜解散
場所
日本橋CONNECT
申込方法
Peatixでチケットを購入し、現地でお見せください。
https://hachimantai.peatix.com/view
定員
30名(先着順)
参加費
社会人3,000円、学生1,000円
参加費は、会場での支払いとなります。お支払い方法は、現金もしくはクレジットカード決済となります。(Suica、PASMOなどの交通電子カードはご利用になれません。あらかじめご注意ください。)
主催:八幡平市
運営:株式会社ファイアープレイス