ブータンが僕に教えてくれた幸せ

資本主義がもたらした豊かさと幸せ

豊かさとは何だろう。
日本、特に東京はとても豊かだと思う。それは物質的な豊かさだと僕は思う。

蛇口をひねれば、飲んでもお腹を壊さない水が出てくるし、停電に悩まされることなどほとんどない。コンビニに行けば、24時間365日好きな時に買い物ができるし、海外の有名ブランドの服やアクセサリーも手に入る。

自分で作らなくても外食やデリバリーだってある。今では家事だって代行してもらうことができる。日本ではお金があれば、あらゆるサービスが享受できる。お金がなくても、掃除、洗濯、自炊など生活スキルがあれば生きていける。つまり、インフラと安全が整っている。

豊富なサービスのおかげで、人とあまり関わらなくても生きていけてしまう。その結果、人との関わりが薄れ、孤独を感じながら過ごす人も少なくないのではないだろうか。僕もその1人で、東京で暮らしていると、ひとりぼっちに感じる瞬間がある。

経済成長の末にたどり着いた今、サービスが増え、物質的には豊かになったが、我々は幸せなのだろうか。幸せとは果たして何だろうか。

ブータンに行って感じた幸せ

今年の2月に、僕はお世話になっている方とのご縁でブータン王国へ行ってきた。中国とインドに挟まれる、アジアの小さなこの国は、世界一幸せな国とも呼ばれている。

ブータンは1970年代にGDPなどのような経済的豊かさではなく、国民総幸福量(GNH)が大切だと当時の国王が提唱し、以来GNHが国の大事な指標となり、政策がおこなわれている。実際に2005年の国勢調査でブータン国民の97%が、今の生活は幸せだと回答している。

ブータンは決して物質的に豊かなわけではない。停電もあるし、24時間好きな時に好きなものが買えたり食べられる環境でもない。インフラもまだまだ整備される必要があるだろう。しかし、それでも国民は幸福だと感じているのだ。その秘訣は何だろうか。ブータン滞在のうちの数日間、僕は地方の村の農家にホームステイをさせてもらっていた。その時に、こんな出来事があった。

冬のブータンは、特に標高が高い地域はひどく冷え込むため、ホストファミリーが寝室に電気ストーブを用意してくれた。しかし困ったことに、ストーブのコードが短く、必要なところまで届かなかったのだ。

すると、この家の家族ではない人物(僕の旅を支えてくれたドライバー)がストーブのコードを切り、延長コードを継ぎ足しはじめた。僕は、どうしてこの人は勝手に他人のストーブを改造し始めるのだろうと驚き、不思議でならなかったが、改造する人も、それを見守る家族も当たり前のようだった。無事にコードの延長が終わり、コンセントにつないだときに、ショートした。すると、今度はまた別の家族でない人物(近所に住んでいると思われる青年)がどこからともなく現れて、コンセントの修理を始めた。気づけばコードは延ばされ、コンセントも直っていた。2人のおかげで、凍えることなく眠りにつくことができた。

日本であれば、自宅の家電に不都合があったときに、業者さんに頼んで修理してもらうだろう。しかし、この村では業者さんでなくても、ご近所同士、またはその場に居合わせた人同士で助けあって、修理を行うのだ。

さらに、ホームステイ先の家族には、親戚でもない居候が共に住んでいたり、長女の職場の同僚がその家で家族のようにともに暮らしていたり、血のつながりなんてことは全く関係なく、みなで楽しそうに生活していた。お互いにできること、手伝えること(炊事洗濯など)で助け合い、ごはんになったら全員で食卓を囲む。「困った時はお互い様ね」と言っているかのように、周りの人を大切にし、お互いにできることで助け合う。そして、みな十分幸せそうに暮らしていた。

ブータンは、インフラの面で日本と比較するとまだまだ整備が必要な部分も多くある。しかし、人々は自分にできることを互いに交換しながら、助け合い、家族であってもなくても、顔を合わせて、共に笑って、楽しそうに暮らしている。僕は、ブータンのこうした側面に彼らの精神的な豊かさを感じた。そして、彼らは人と人とのつながりを大切にし、そのつながりの中で、助け合って生きている。何より彼らはさみしくなんてなさそうだった。

人とのつながりという幸せ

日本にいれば、特に東京にいれば、人は一人で生きていけると錯覚してしまいそうになる。しかし、本当のところは決してそうではない。

何不自由のないインフラがあることも、それを整備し、支えてくれている人がいるからだ。ゴミは決められた日に出せば、業者の方が持って行き、代わりに処分してくれている。普段の生活ではあまり感じなくても、多くの人の支えで生かされているのだ。僕たちは助け合いのリレーの中で生きているのだ。

できることで相手を助け、できないことは周りが助けてくれる。「困ったときはお互い様ね」と助け合うことができるのであれば、物質的には不自由であっても、精神的に豊かなのかもしれない。なぜなら、お金がなくても、サービスが十分でなくても、助け合いのリレーがあるからだ。ブータンに行くことで僕は、「この人とのつながり、助け合いが大切だということ」に改めて気づくことができた。

ファイアープレイスは、場づくりを通してこうしたつながりをつくる会社だ。つながりは、僕たちの生活を豊かにしてくれる。ブータンでの滞在は、そのことを改めて認識させてくれた。ファイアープレイスのメンバーとして、人とのつながりを大切に、つながってくれた仲間に感謝し、これからも新しいつながりをつくることに貢献していきたいと強く願い、そして、実践していきたいと思う。

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